中吉の宇宙

ふと気になる知識の掃きだめ

中国、韓国、ベトナム人などの姓、”漢姓”とは?

こんにちは。突然ですが、日本で一番多い苗字はなんだか知っていますか?

そう、佐藤さんです。佐藤の苗字を持つ人は日本に約187万人もいるそうで、日本人の100人に一人は佐藤さんということになります。これは有名な話ですね。「リアル鬼ごっこ」で知ったという人もいるのではないでしょうか。

 

では、世界で一番多い苗字は何でしょう?スミス?ジョンソン?いえいえ、違います。

 

実は、さんが一番多いのです。意外に思ったかもしれませんが、考えてみればそう不思議な話ではありません。世界で一番人口が多いのが中国。その中国で、最も多いとされる5つの姓を五大姓といいます。多い順に、王、李、張、劉、陳と並びます。

 

でも、ちょっと待って!李さんより王さんのほうが多いじゃん!と言いたくなりますが、この李や王といった苗字は中国だけでつかわれている苗字ではありません。これらは「漢姓」といって、中国のほかにも台湾、北朝鮮、韓国、ベトナム、そのほかシンガポール、マレーシア、アメリカ、カナダなど世界中に散らばった中国人や朝鮮人が使用しています。漢姓の割合は国によってことなります。例えば韓国の苗字は多い順に金、李、朴、崔、鄭となっており、この五姓だけで人口の半分以上を占めているそう。ベトナムでは(グエン)さんだけで4割も占めて、次いで陳、黎、范、黄が多いです。ベトナムでは李さんは以外にも少なく、人口の0.5パーセントしかいません。世界全体で数えると李さんは1億1000万人に上り、世界一多い苗字として知られているのです。

 

日本では漢風の姓の風習はありません。これは歴史的背景が影響していると思われ、日本でも奈良時代に唐風文化が流行ったときには藤原氏が藤(とう)氏、菅原氏は菅(かん)氏と名乗った時期がありました。今でいえば森さんがフォレスト、大田さんがビッグフィールドと名乗るようなものでしょうか。それも平安時代の国風文化の時期には廃れ、もとの日本固有の苗字に戻りました。奈良時代には中国は隋唐の時代で社会が安定し日本も遣隋使、遣唐使を派遣するなど大きな影響力をもっていましたが、平安時代には五代十国時代遊牧民が大きな力を持った宋代と中国の力は弱まっていました。現在西洋の文化が支配的なのを見ても、やはり政治的な力を持っている国の文化は、魅力的に見えるようです。

 

一方朝鮮やベトナムは、地理的に中国と近く、中華王朝に支配されていた時代もあり、日本よりも中国の文化的影響が強いですよね。面白いのは、この二国は漢字を使っていないのに、日本はいまだに使っているということです。朝鮮半島では世宗がつくった固有文字のハングル、ベトナムではフランス植民地時代にもたらされたアルファベット表記法のクオック・グーを使用しています。もしかしたら、常に中国の影響下に置かれていた両国にとって、漢字を捨てることは中華からの脱却を意識していたのかもしれませんね。

 

数多くの武将が登場する三国志などを読むと、いろいろな漢姓を知ることができます。曹操氏は韓国にも多くみられ、今話題の曹国氏もこの姓です。劉備氏は上記の通り現在の中国で4番目に多い姓で、漢王朝を建てたのが劉邦なので漢の国姓で、ほかにも荊州劉表益州劉璋など多く登場します。孫権氏も有名な姓で、物語の中で孫堅が自分のことを、兵法書孫子を書いた孫武の子孫だといっています。また西遊記孫悟空ソフトバンク社長の孫正義氏も孫氏ですね。

 

三国志の中には、夏侯惇諸葛亮太史慈司馬懿皇甫嵩公孫瓚など、二文字の姓も見られます。このような姓を復姓といい、一文字が多い漢姓では結構珍しいです。中には独狐(どっこ)氏のような面白い名前もあります。

 

いかがでしたか?日本ではあまり見ない漢姓なだけに知らないことも多かったかもしれません。ちなみに個人的に好きな姓は龍氏です。ではまた。